坐骨神経痛の意外な落とし穴
坐骨神経痛で来院される患者様から、カウンセリングの際によくこんな言葉をいただきます。
先日こられたお客様も最初こんなことを言われていました。
「先生、私は腰は全然痛くないんです」
「痛いのはお尻と太ももの裏だけだから、そこをマッサージしてくれればいいよ」
「腰は動かせるから、そんなに重症じゃないですよね?」
ご本人は「腰に痛みがない=腰は悪くない」と感じていらっしゃるので、当然の反応かと思います。
しかし、専門家の視点から言わせていただくと、
「腰が痛くない坐骨神経痛」こそ、実は注意深く見なければならない状態なのです。
今回は、「腰痛がないから大丈夫」という自己判断がなぜ危険なのか、その裏に隠れている医学的なリスクについて解説します。
◾️なぜ「腰が悪い」のに「足だけ」痛むのか?
まず、基本的なメカニズムを整理しましょう。
よく例えられるのが、「ブレーカーと電球」の関係です。
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腰(背骨): ブレーカー(電源のスイッチ)
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神経: 電線
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お尻や足: 電球
もし、家の電球がチカチカ点滅していたら、電球そのものではなく「配線」や「大元のブレーカー」を疑いますよね?
坐骨神経痛もこれと同じです。 原因(病変)は「腰」というブレーカーにあるのですが、痛みという信号が出ているのが「足」という離れた場所なのです。
これを医学的には「放散痛(ほうさんつう)」と呼びます。
悪い場所と、痛む場所が違う。これが神経痛の最大の特徴であり、厄介な点です。
◾️「腰痛がない」=「神経のトラブル」の可能性
少し専門的なお話になりますが、
坐骨神経痛の症状は、大きく2つのタイプに分類して分析することがあります。
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腰痛を伴う 坐骨神経痛
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腰痛を伴わない 坐骨神経痛
一般的には「腰も痛いほうが重症」と思われがちですが、実は「2. 腰痛を伴わない」タイプの方が、腰椎(ようつい)の病変がダイレクトに神経に影響している可能性があります。
◾️なぜ腰が痛くないのに危険なのか?
「腰が痛い」というのは、多くの場合、腰の筋肉が炎症を起こしていたり、関節が悲鳴を上げていたりする状態です。
つまり、体が「ここを守って!」と腰でサイレンを鳴らしている状態です。
一方、「腰は痛くないけれど、足に激痛やしびれがある」場合。
これは、腰の筋肉や関節の痛み(サイレン)を飛び越えて、背骨の中にある「神経の根っこ(神経根)」そのものが、ピンポイントで圧迫されている可能性が高いことを示唆しています。
医学的な研究や臨床データにおいても、
「下肢症状(足の痛み)のみを訴えるケースでは、椎間板ヘルニアなどの腰椎病変が隠れているリスクが高い」 という見解があります。
つまり、 「腰が痛くない」=「腰が健康」なのではなく、 「腰の筋肉痛ではなく、もっと奥の神経障害が起きている」 と捉えるべきなのです。
◾️「動けてしまう」からこそ、より悪化させやすい
このタイプの最も怖いところは、「腰が痛くないから、無理ができてしまう」点にあります。
もし腰に激痛があれば、誰でも安静にしますし、重いものを持つのを控えます。 しかし、腰が痛くないと、「足が少し痺れるけど、動けるから大丈夫」と判断し、仕事や家事を続けてしまいます。
その結果、 気づかないうちに神経への圧迫が進行し、
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ある日突然、足に力が入らなくなる(麻痺)
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排尿や排便の感覚がおかしくなる
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しびれが取れなくなる
といった、重篤な状態に進んでしまうリスクがあるのです。
◾️お尻や足の痛みは、腰からの「無言のSOS」
「痛いところだけ揉んでくれればいい」
そのお気持ちは痛いほど分かります。今つらいのはお尻や足ですから、そこを触ってほしくなるのは当然です。
しかし、火元(腰)を消さずに、煙(足の痛み)だけを追い払っても、火事は消えません。
もしあなたが、 「腰はなんともないのに、足やお尻だけが痛い・しびれる」 と感じているなら、それは「軽症」ではなく、「純粋な神経症状」かもしれません。
自己判断で「大丈夫」と決めつけず、一度しっかりと検査を行い、腰の状態(神経の圧迫状況)を確認することをお勧めします。
当院では、痛い場所だけでなく、その原因となっている「隠れた腰の問題」をしっかりと見極めて施術を行います。
「腰は痛くないから」と遠慮せず、どんな些細な違和感でもご相談ください。