五十肩（四十肩）

五十肩は、医学的には「肩関節周囲炎（かたかんせつしゅういえん）」と呼ばれます。

• 40〜60代に多くみられる

• 肩の周りの筋肉・腱・靭帯・関節包（関節を包む袋）などが
  炎症を起こし、強い痛みと動きの制限が出る状態

• レントゲンでは大きな骨の異常が見つからないことが多い

「腕が上がらない」という点では、腱板断裂（けんばんだんれつ）など他の肩の病気と似ていますが、
五十肩は、肩周囲の組織が固くなり、関節の動く“入れ物”自体が小さくなってしまうイメージです。

五十肩は、ある日突然完成するわけではなく、

次のような「3つの時期」をたどりながら変化していきます。

① 炎症期（痛みのピークの時期）

• 何もしなくてもズキズキとうずく

• 特に**夜間の痛み（夜間痛）**が強く、寝返りで飛び起きることもある

• 服の脱ぎ着、洗髪、エプロンのひもを結ぶ動作などで鋭い痛み

この時期は、肩の中で炎症が強く起きているため、
無理に動かしたり、強くもんだりするとかえって悪化することがあります。

② 拘縮期（固まってしまう時期）

• 夜のズキズキは少し落ち着いてくる

• その代わり、肩の動きが極端に悪くなる

  • 腕が前や横に上げにくい

  • 背中に手を回せない／エプロンのひもが結べない（結帯動作）

• 動く範囲の一番端で、強いツッパリ感と痛み

この時期は、炎症がおさまりつつある一方で、
関節を包む袋（関節包）が縮み、肩全体がギュッと固まってしまっている状態です。

③ 回復期（少しずつ動きが戻る時期）

• 日常生活の痛みはだいぶ軽くなる

• 少しずつ動く範囲が広がってくる

• ストレッチや体操を続けると、「動かした分だけ良くなっていく」感覚が出てくる

この時期は、適切なストレッチ・体操・姿勢の改善を行うことで、
肩の動きの戻り方が大きく変わる大切なタイミングです。

なぜ五十肩になるのか？（原因のイメージ）

五十肩の原因は「これだけ」と言い切れるものではありませんが、
次のような要素が重なることで起こりやすくなると考えられています。

1. 肩関節の「老化」と小さな傷の積み重ね

• 年齢とともに、筋肉や腱、靭帯の柔らかさが低下

• 日常の家事・仕事・スポーツなどの積み重ねで
  肩の組織に小さな傷が増える

• その部分に炎症が起き、痛みと動きの制限へ

2. 姿勢の崩れ（猫背・巻き肩）と肩甲骨の動きの悪さ

• 長時間のスマホ・パソコン・運転などで、頭と肩が前に出た姿勢が続く

• 肩甲骨が外に広がり、動きにくくなる

• 本来「肩甲骨と上腕骨が2：1くらいの割合で協力して動く」のが理想ですが、
  肩甲骨が動かない分、上腕骨だけで無理に動かそうとして関節に負担がかかります。

3. 血行不良・自律神経の乱れ

• 冷え・ストレス・睡眠不足・運動不足などが続くと、
  肩まわりの血流が悪くなりやすい

• 筋肉や関節の修復力が落ち、炎症が長引く

五十肩は「肩の問題」ではありますが、
実際には姿勢・生活習慣・自律神経・血流の状態など、全身の影響を受けていることが多い症状です。

「五十肩は放っておいても1〜2年で治る」と聞いたことがある方も多いと思います。

しかし実際では、次のような方も少なくありません。

• 痛みは落ち着いたが、「腕が最後まで上がらない」まま癖になっている

• 無意識に痛い側をかばうため、反対の肩や首・腰まで痛くなってきた

• スポーツや趣味（ゴルフ・テニス・園芸など）を諦めてしまった

「動きの制限」が残ったまま年齢を重ねると、その後の生活の質にも大きく影響してきます。
できるだけ早い段階で、今どの時期なのかを見極めて、適切なケアを始めることが大切です。

当院では、五十肩を肩だけの問題ではなく、

「姿勢＋肩甲骨＋背骨＋肋骨＋自律神経＋血流」のトータルな問題と捉え、肩だけをグイグイもむ・強くひねるような施術は行いません。

1. 今の「時期」を見極める

• 痛みが最も強いのか（炎症期）

• 固さがメインなのか（拘縮〜回復期）

• 夜間痛の有無

• どの動きが一番つらいのか

を丁寧にお聞きし、簡単な動きのテストを行った上で、
その時期に合った施術プランを提案します。

2. 肩だけでなく「土台」から整える

• 頭の位置や首・背骨・肋骨の動き

• 肩甲骨の位置と動き（上・下・内・外へのスライドや回旋）

• 骨盤・体幹のバランス

などをチェックし、
肩に負担をかけている“原因の連鎖”を一つずつほどいていくイメージで整えていきます。

3. 自律神経と血流を整えるやさしい施術

• 強い痛みを感じるような矯正や、ボキボキする施術ではなく

• 呼吸を使いながら、筋肉と関節がゆるみやすい方向へ誘導する

• 首〜背中〜胸郭（肋骨まわり）の動きを出し、
  肩まわりの血流・リンパの流れを促す

五十肩の方は、痛みによるストレスや睡眠不足から、
自律神経が過敏になっていることも多いため、
「安心して力が抜ける」ことを大切にした施術を心がけています。

4. ご自宅でのセルフケアもセットでサポート

• 今の時期にやって良いこと／やらない方が良いこと

• お風呂の入り方・冷やした方が良い場面、温めた方が良い場面

• テレビを見ながらできる簡単な肩甲骨体操

• 朝のこわばりを軽くする寝方・枕の高さの目安

など、お一人おひとりの状態に合わせて、
「その日からできる具体的なセルフケア」をお伝えします。